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シンポジウム2005 要旨急性骨髄性白血病(AML)のin vivo イメージング--前臨床段階でのスクリーニングおよび分子治療法の開発Emmet Mc Cormack Institute for Internal Medicine, Medical Faculty, Haukeland University Hospital, N-5021 Bergen これまで、癌治療において臨床的価値のある化学療法薬の開発と改良は、白血病およびリンパ腫マウス(1)を用いた初期スクリーニングにより進められてきた。しかし、膨大な数の新薬の開発が臨床試験の最終段階で中止されていることから、より予測に優れ、かつハイスループットな前臨床動物モデルの使用が求められている。血液性悪性腫瘍の場合、病因の検出・モニター・定量の能力の限界がモデル系の開発における重大な障害となっており、有意な結果に至るまでには膨大な数の動物が犠牲にされてきた。このような方法では、結果が直接数値化できないうえに、動物愛護に欠け、かつ時間と費用も必要とした。こうした点を克服するため、AML モデル系の開発には、継続的・非侵襲的かつ定量性のある、より適切なin vivo AML イメージングモダリティが不可欠である。病気や治療計画の途上で複数のタイムポイントにおいて動物をin vivo イメージングすることで、病理や治療への反応、薬物動態をより深く理解し、新薬候補を正確に予見する確率を高めることができる。現在、さまざまなin vivo イメージング技術が利用されているが(2 〜 6)、脊髄部分のin vivoイメージングには蛍光や化学発光などによるオプティカルイメージング技術が最良の方法である。 本講演では、実験動物用in vivo 蛍光イメージングシステムeXplore Optix を使用したAML とアポトーシス細胞のin vivo イメージングについてご紹介し、eXplore Optix が採用するタイムドメイン(TD)の長所についてお話ししたい。 参考文献
動物実験医学領域における低侵襲的イメージングモダリティの有用性山田雅之 慶應義塾大学総合医科学研究センター; 磁気共鳴画像装置(MRI)やX 線コンピューター断層撮影装置(CT)に代表される低侵襲的イメージングモダリティ(以下、低侵襲モダリティ)は、生体を大きく傷つけることなく内部構造の観察を可能とするため、すでに医療現場において普及し、画像診断医学の中心的役割を担っている。それら低侵襲モダリティの性能は、近年の科学技術の進歩に伴って飛躍的に向上し、正確な画像診断に寄与する高い画質と優れた病巣検出能を実現している。 低侵襲モダリティを用いて非破壊的に対象の内部構造を観察するという解析手法は、人を対象とする臨床医学のみならず、実験動物を対象とした動物実験医学においてもその有用性が期待されている。このため欧米では、臨床装置の優れた性能を維持しつつ、動物実験での利用に特化した実験動物専用装置が開発され、多くの研究機関で利用されている。 一方、わが国ではそのような実験動物専用の低侵襲モダリティが広く利用されるには至っておらず、実験動物の内部構造は主として解剖などの侵襲的手法により解析される。これにより、同一の実験動物を経時的に観察し、繰り返して利用することは難しく、そのことが実験動物の"Reduction"を妨げる要因の一つにもなっている。 このような状況の中、慶応義塾大学医学部の連携大学院である(財)実験動物中央研究所には、昨年3 月に小動物専用超高磁場MRI 装置Bruker Biospin 製PharmaScan (7.04T) が導入された。装置の設置後、実験環境の整備や人材の育成、対象動物に応じた撮像条件の最適化などを経て、現在では安定稼働に至っている。本装置ではマウスやラットといった齧歯類実験動物に加え、超小型霊長類のコモンマーモセットについても精力的に画像解析を進めている。さらに本年4 月には、GEヘルスケア・ジャパン社製小動物専用X 線CT 装置eXplore Locus: Micro CT Imager が隣接して設置された。本装置はGEヘルスケア・ジャパン社と同研究所が共同で運用しており、現在同社のスタッフと共に種々の実験動物を対象とした撮影方法の最適化と病態モデル動物の撮影を実施している。 本講演では、それら低侵襲モダリティの使用により実際に得られた画像を供覧し、動物実験医学領域における低侵襲モダリティの高い有用性と将来展望についてご紹介したい。 生命システムを分ける・測る・操る・創る:体内時計を例に上田泰己 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 2003年のヒトゲノム配列の完全解読をはじめとして数多くの生物のゲノム配列が次々と解読され、DNAチップをはじめとするゲノム規模の情報・マテリアルを活用した実験技術の開発が進んでいます。このようなゲノムプロジェクトに基づくゲノム規模の研究資源(情報・マテリアル・技術)を背景として、生命を理解する枠組み(パラダイム)が大きく変化しようとしています。システム生物学という分野は、ダイナミックで複雑な生命現象をシステムとして理解することを目的として形成されつつある生命科学分野で、生命現象を分子の言葉で理解しようとする分子生物学の次を担う生命科学として期待されている分野です。シンポジウムでは、システム生物学の現在について哺乳類の体内時計をモデル系とした試みについてお話させていただきます。 一言でただ「生命をシステムとして理解する」といってもその理解の基準はさまざまです。システム生物学では生命のシステム的理解を4 つの段階に分類しています。まず(1)生命システムを構成する因子とそれらの相互作用を同定し(要素に「分ける」)、次に(2)生命システムの挙動を定量的に測定・予測し(正確に「測る」)、さらに(3)生命システムの挙動を制御し(自在に「操る」)、最後に(4)望みのシステムを設計する(一から「創る」)というものです。それぞれ(1)システム同定(System Identi. cation) (2)システム解析(System Analysis) (3)システム制御(System Control) (4)システム設計(System Design)と呼ばれています。 まず(1)システム同定では、生命現象を支えているシステムの構成要素(遺伝子)とそれらの間の相互作用(ネットワーク)を同定することを目指します。これは分子生物学によって行われてきたアプローチの自然な延長であり、体内時計研究でいえば、時計遺伝子の同定や時計遺伝子のネットワークの解明が該当します。システム同定においては、細胞が数千から数万種類の構成要素(遺伝子)から構成されていることを考えると、ゲノムスケールの研究資源を戦略的に用いた解析が必要不可欠だと考えられます。 次に(2)システム解析では、システム同定で明らかになった遺伝子ネットワークの構造情報に加えて、新たに濃度・速度などさまざまな量を測定することで、定量的にシステムの挙動を予測し、実験による検証を行うことが核になります。体内時計研究でいえば、システム同定で解明された時計遺伝子のネットワーク情報とそれぞれの時計遺伝子の転写・翻訳・分解・修飾等の速度の定量的な測定データに基づいて、自律振動の発振機構(特にフィードバックの遅れを創り出す機構)の解析や、広い温度条件下で一定の周期を保つ機構(温度補償機構)の解析、多くの時計細胞が同調して発振する機構(同調機構)の解析、様々な位相を創り出す機構の解析などがシステム解析研究に該当します。また、ヒトのリズム障害の定量的な分析も当てはまるでしょう。定量的な予測と検証が核となるため、様々な量(濃度、速度等)の定量的な測定が基盤となります。 さらに(3)システム制御ではシステム解析で得られた定量的なモデルからの予測に基づいて生命現象を任意の状態へと制御することを目的とします。体内時計研究でいえば、体内時計を調節する際の最適な標的の同定、リズム治療薬の開発およびその投与法の開発等がシステム制御に該当します。これらのシステム制御の研究ではシステム解析で開発された定量的な測定法に加えて、新たに遺伝子産物の量・質を時間的、空間的に摂動する法(変化を与える方法)の開発が必須となるでしょう。 最後に(4)システム設計では望みの振る舞いをするシステムを再構築することを目的とします。体内時計研究でいえば自律振動能を持ち、外的な刺激に応答可能で、温度補償性を持つ体内時計細胞の創出、複数の時計細胞が同調して機能する時計組織の創出などが該当します。生命システムがシンプルなことを複雑なネットワークで達成している理由を理解するためには、進化(システムの生成)をもう一度実験的にたどることが必要かもしれません。これらのシステム設計の研究分野では分子ネットワークを自由に作りこむ技術の開発が 必須不可欠で、in vitro における再構成系の開発は特に重要でしょう。また、システム設計の分野では、生命システムを再構成しようというのですから、倫理的な配慮が特に必要です。さて、これらシステム生物学の基礎的な4分野の中で、特にシステム同定はシステム解析、システム制御、システム設計の研究の進展に多大な影響を与え、時間がかかる分野でもあります。ですから、どのようにして体系的・効率的にシステム同定を行えばよいのかが問題になります。そのひとつの方法は、ゲノムスケールの研究資源を最大限に利用するというものです。シンポジウムでは、ゲノムスケールの研究資源を用いたシステム同定のシナリオを、哺乳類の体内時計研究を例にとりながら紹介します。私たちは、(1)経時的且つ包括的な遺伝子発現解析による時計(関連)遺伝子の抽出、(2)これら時計(関連)遺伝子のヒト相同遺伝子を対象とする包括的な転写開始点決定、(3)バイオインフォマティクスによる転写開始点近傍の推定プロモーター上の転写因子応答配列と発現振動との相関関係の探索、(4)in vitro 実験系による時計制御因子応答配列の決定、の4つの技術を用いて哺乳類体内時計のシステム同定に取り組んでおり、これまでに体内時計を構成する転写ネットワークを明らかにしてきました(1、2)。 シンポジウムでは現在までの成果を紹介すると共に、以上のようなシステム同定の手法を体内時計とは異なった生命現象にどのようにして応用していくのかについても議論したいと考えています。また時間が許せば、ヒト体内時計研究の基礎となるDNA チップを用いた体内時刻・リズム障害診断法(3)についてもお話ししたいと考えています。 参考文献
“わかる”顕微鏡を作って老化の謎を解こう瀬藤光利 自然科学研究機構生理学研究所 岡崎統合バイオサイエンスセンター 戦略的方法論研究領域(ナノ形態生理); 私たちはなぜ年老いて死んでいくのでしょう? その中には期待したとおり、神経難病シャルコーマリーツース病の原因遺伝子があり(2001 Cellcoverstory)、私たちが発見同定した遺伝子が病気の診断や治療にすぐにつながるという大変嬉しいことがわかりました。そして、モーター蛋白群がどのように機能しているかを明らかにする解析法を開発し、樹状突起モーターKIF17 が個別の荷物、この場合NMDA 受容体を特異的な分子機構によって認識することを示しました(Setou et al., 2000 Science, cover story, Research Article、朝日新聞一面)。KIF17 を増やしたマウスは賢くなることがわかり(Wong, Setou et al., PNAS)、さらに一歩研究を進め、モーター結合蛋白がモーターの進行方向を制御できることを発見しました(Setou et al., Nature 2002、朝日新聞)。 これら一連の研究によって、シャルコーマリーツース病やアルツハイマー病などの神経難病には、モーター蛋白質の量が足りないことが係っていることがわかってきたのですが、不思議なことに、これらの病気は同じ遺伝的背景を持っている人でも年をとってから発症します。つまり、遺伝子はわかったけれども、遺伝子だけでは決まらない何かがそこにはあるように思われます。神経難病の多くに、変性した蛋白質の蓄積が見られることから神経難病をモデルに考え、老化と蛋白質の分解系のバランスに着目しました。そうしたところ、最近、新しく生まれた蛋白質の輸送と老化していらなくなった蛋白質の分解の大切なバランスの要となっている酵素を発見しました。この酵素に対する薬剤はシャルコーマリーツース病やアルツハイマー病などの輸送低下によっておこる病態の治療薬になる可能性があります。 先ほど申し上げた年をとると変なものが溜まってきて、それが悪さをしている状態というのは、昔の病理学者が見つけてレビー小体やピック小体などと名前をつけています。いくつかの病気では蓄積がはっきりしているのですが、実は神経細胞以外、あらゆる細胞でも起こっているのではないかと考えられ始めています。ということは、それら異常蓄積が何からできているのかが、老化の謎を解くヒントになるかもしれません。 しかし残念ながら、その蓄積しているものが何であるのかが実はわかっていないのです。果たしてどうしたらよいのか・・・。 これまでの方法ではなぜダメなのかを考え、おそらく顕微鏡で見ている形態学、解剖学と同定している生化学がうまく繋がっていないからではないかと考えました。 誰か天才的な、画期的な方法を発明してくれればいいのですが。 そこで、見ているものが何なのかが“解る”顕微鏡をこれから作ろう、というのが今日のお話です。 今、私が考えているところだと、方法は大きく分けて二通りあると思います。一つは、解剖学の顕微鏡を発達させて生化学同定法と近づけていくこと、もう一つは、生化学同定法を発達させて解剖学顕微鏡に近づけていくこと、です。顕微鏡を発達させるには、特に電子顕微鏡に注目しています。解像度をずっとずっと上げていくと、さらにあと一桁ちょっと上げることができれば、原子レベルの解像度に到達します。となると例えば、蛋白質であればアミノ酸の一つ一つがアラニン、ロイシン、バリン・・・というように読めていき、何をみているのかが究極的に解るはずです。最近、私たちグループの永山國昭教授の開発した『位相差電子顕微鏡』によって、細胞内の微小管を無固定無染色で観察することに世界で初めて成功しました。これは朗報です。しかし、でもまだ一桁以上解像度が足りません。光学顕微鏡と違って電子顕微鏡は、原子が十分見えるだけの短い波を使っているので、原理的にはもっと見えていいはずなのですが、実際には良く見ようとすると電子線ダメージで試料が焼け焦げてしまうのです。しかしこの問題には、私たち以外にも、京都大学の藤吉義則教授や大阪大学の難波啓一教授が、それぞれに素晴らしい技術やアイデアでチャレンジされていますし、電子顕微鏡メーカーは日本が世界トップの技術を誇っていますので、近いうちに私たち日本のグループのうち誰かが、生体の原子レベル解像度観察に到達するのではないかと頑張っています。 もう一つ、生化学同定法を発展させて解剖学顕微鏡に近づけてしまおうという方法は、質量分析の技術、ノーベル賞を田中耕一氏が受賞されたことで一躍有名になりましたが、これを解剖学的に使う方法に注目しています。病気や老化で何かが溜まっているのであれば、見ているところに直接レーザーを当ててイオン化し、質量分析すれば、何を見ているかわかるはずです。数年前から私たちが株式会社島津製作所と一緒に開発を始め、昨年からはJST先端機器計測開発プロジェクトにも応援してもらっています。質量分析技術を解剖学に持ち込む試みは、私自身が分野の発明者の一人です。まだ始まったばかりの若い分野です。頑張ればきっと、いろいろな思いがけない何かが見えてくるに違いないという、やりがいのあるチャレンジなのです。皆さんも私たちと一緒に、解る顕微鏡を作って老化の謎を解きませんか? 完全長ヒトcDNA を用いた大規模蛋白質ネットワーク解析夏目徹 産業技術総合研究所生物情報解析研究センター 蛋白質ネットワーク解析チーム これまでの蛋白質科学は、忍耐と労力、智恵と工夫が要求される地道な研究の進め方が主流であり、ゲノム科学のような網羅的・包括的解析は難しいとされてきた。しかし、質量分析法の高感度化に加え、データベース拡充、計算機の演算速度の向上、アルゴリズムの進歩による分析後のデータ処理の自動化が実現し、今や本格的な蛋白質大規模解析の時代を迎えようとしている。 我々のチームでは、最先端のハイテクと" 匠の技(最先端のローテク)" を駆使し、蛋白質相互作用の大規模ネットワーク解析の実現に取り組んでいる。まず、我々は、蛋白質の大量解析の最大のボトルネックとされるサンプル調製に完全長ヒトcDNAを利用し、微量の蛋白質をハイスループット生産することを考えた。この頃には、独自に開発してきた高感度解析システム、ダイレクトナノフローLC-MS/MS が完成しており、大規模解析が技術的に可能になったという手応えは十分にあった。しかし、既知相互作用を利用した解析で、高感度システムゆえに蛋白質の非特異的吸着が大量のノイズとして検出されてしまうという問題に直面し、初期段階で大きな挫折を味わうことになる。結局、最適な条件を得るまでに、膨大なデータ収集と800におよぶ条件検討を繰り返した。 既知の相互作用解析で自信を付けた我々が次に取り組んだのが、未知遺伝子から発現する未知の相互作用をもつ蛋白質の同定であった。この過程で、我々はユビキチン様蛋白質修飾システム等を発見し、ゲノム配列からはわからなかった遺伝子の分子機能を相互作用から解明するという成功を収めた。 相互作用解析から大規模なネットワーク解析に至るまでの工程をメソッドの最適化、メソッドバリデーション、大規模化の3 ステップに分けて考えると、我々はようやくメソッドバリデーションのステップに入ったところである。大規模解析の実現は着実に近づいてきているが、大量のデータの検証にはやはり各分野の専門家による地道な作業が要求されるのが現状だ。やがてこのステップに何らかの革新的な方法が導入され、システム全体の信頼性と限界とが正しく評価されれば、個別の研究からは得られなかった視点や知見を見いだし、新しい研究手法を生み出すことが可能である。これこそが真のポストゲノムの挑戦であり、我々のチームが目指すところでもある。 参考文献
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