eXplore Locusを利用した肥満モデルマウスの体脂肪測定
−メタボリックシンドローム研究ツールとしての活用−
臨床分野ではCT(Computed Tomography)*1を利用した体脂肪測定は、すでに実施されています。そこで、弊社より販売されている実験小動物用CTを利用して肥満モデルマウスの体脂肪測定を行いました。
*1【CT】基本的にはレントゲン写真(単純X線撮影)と同じで、生体を通過したX線を検出器でとらえて組織のX線吸収率の違いを画像化しています。レントゲン写真と違う点は、X線管と検出器が生体の周りをぐるりと回転して、色々な方向から撮ったデータをコンピュータで計算して、もとの立体的な吸収分布画像を再構成する点です。
背景
肥満症や高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、それぞれが独立した別の病気ではなく、肥満−特に内臓に脂肪が蓄積した肥満(内臓脂肪型肥満といいます)−が原因であることがわかってきました。このように、内臓脂肪型肥満によって、さまざまな病気(高血圧、高脂血症、糖尿病のほか、心筋梗塞や脳梗塞など)が引き起こされやすくなった状態を「メタボリックシンドローム」といい、治療の対象として考えられるようになってきました。
日本の企業労働者12万人の調査では、軽症であっても「肥満」、「高血圧」 、「高血糖」、「高トリグリセリド(中性脂肪)血症」、または「高コレステロール血症」の危険因子を1つ持つ人は心臓病の発症リスクが5倍、2つ持つ人は10倍、3〜4つ併せ持つ人では31倍にもなることがわかっています。また、厚生労働省の調査では、高血圧患者数は3,900万人、高脂血症は2,200万人、糖尿病(予備軍を含め)は1,620万人、肥満症は468万人と言われており、これらの患者数は年々増加しています。
実験小動物(マウス、ラットなど)を利用して内臓脂肪型肥満を対象とした機能性食品および治療薬の開発が多くの企業において精力的に行われています。実験小動物の体脂肪測定(特に、皮下脂肪と内臓脂肪との分別測定)では、動物を解剖して脂肪組織をかき取り重量測定を行うという手法が一般的に行われています。しかしながら、かき取り作業は多くの労力と高い技術を必要とするうえに、その測定精度を高めるためには多数の動物を使用する必要があり、研究者にとってかなりの負担となっていました。
CTを利用した体脂肪測定を実験小動物に応用できれば、解剖による脂肪摘出の手間を省くことができるだけではなく、同じ個体を利用した経時的変化を観察することが可能となり、得られるデータの質も向上します。また、動物使用数の削減も期待できます。
使用した動物
- BKS.Cg-+Leprdb/+Leprdb/Jcl (homo)
- BKS.Cg-m+/+Leprdb/Jcl (hetero)
- BKS.Cg-m+/m+/Jcl (wild)
10週齢homo male 5匹・female 5匹、hetero male 5匹・female 5匹、wild male5匹・female 5匹
Lepr:脂肪細胞から分泌されるホルモンであるレプチンの受容体遺伝子。この遺伝子の突然変異は、単一遺伝子性肥満の原因の1つです。
麻酔条件
イソフルレン気化麻酔 2 %(麻酔導入時濃度 3 %)
測定条件
管電圧:80 kVp、管電流:450 µA、View数:400
回転径:360度、Frame平均:3、露光時間:100 ms
解像度:93 µm、測定時間:13 min.、再構成時間:10 min.
Data
凡例

腹部CT画像:BKS.Cg-+Leprdb/+Leprdb/Jcl, homo male

腹部CT画像:BKS.Cg-m+/+Leprdb/Jcl, hetero male

腹部CT画像:BKS.Cg-m+/m+/Jcl, wild male

脂肪体積の計算方法
CTによる画像から脂肪量を計算する場合、脂肪組織の持つCT値(X線吸収係数)から他の組織と区別する方法を用います。画像情報から脂肪とされるCT値(約 -200)の領域を選択することにより、体積が求められます。

皮下脂肪と内臓脂肪の体積測定
CTの画像データをROI(Region Of Interest)*2で囲み、腹膜外の脂肪部分を皮下脂肪とし、腹膜内の脂肪部分を内臓脂肪としました。各脂肪体積は、画像データの全CT値データ(ボクセル*3ごと)を抽出後、表計算ソフトを用いて、脂肪のCT値(−300〜−100)を持つボクセル数から計算しました。
*2【ROI】Region Of Interest 。CT画像内の興味ある領域を選択すること。
*3【ボクセル】立方体形式のデータ。ピクセルが2次元(面積)であるのに対して、ボクセルは3次元(体積)の情報をもちます。
体脂肪選択画面

内臓脂肪選択画面

皮下脂肪選択画面

測定結果(1)

測定結果(2)

測定結果(3)

まとめ
今回の実験に使ったマウスに関しては、表現型に差異が見られるのはhomoだけであると言われています。今回の実験結果でも、CTの結果から計算した脂肪の量についてはhomoだけが明らかに異なっており、CTでも従来の方法による結果と同じ結果を得ることができました。
CTによる脂肪の測定は非常に簡便な方法として利用できます。特に、解剖前の「生きた動物での脂肪量」を測定できるという点で、解剖に比べて優れています。さらに、CTでの経時的な観察に加えて、最終的には、解剖および病理所見などの情報を統合することによって、より精度の高い解析を行うことができると考えられます。
Tips:CTによる脂肪測定時の注意点
CTによる脂肪測定時には、以下の点をふまえて実施するとよりよい結果を得ることができます。
- X線による影響:CTはX線を利用した測定方法なので、X線による影響を考慮する必要があります。1週間に2回以上の測定は避けるべきです。
- 脂肪のCT値:マウスの脂肪のCT値範囲を-300〜-100としましたが、測定条件によって若干変動する可能性があります。そのため、画像データを確認しながら、微調整が必要になる場合があります。また、脂肪以外の一部の臓器は、脂肪と近似したCT値を示すことがあるので注意が必要です。
『本実験において使用したII型糖尿病モデルマウスは、日本クレア株式会社様のご好意によりご提供いただきました。また、本実験は、財団法人 実験動物中央研究所 画像解析研究室様との共同研究の一環として実施されたものです。この場をおかりして、日本クレア株式会社様および財団法人 実験動物中央研究所様に、厚く御礼申し上げます。なお、これら画像データの無断転載等はかたく禁じられております。』
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