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蛍光プローブを用いたトランスポーター輸送基質スクリーニングシステムの構築

山口 浩明
東北大学病院 薬剤部 助教

薬物の体内動態を理解するうえで、体内動態制御因子であるトランスポーターの輸送特性を把握することは極めて重要である。標的臓器への薬物の選択的なターゲッティングにトランスポーターを活用できれば、癌や感染症の化学療法をより安全かつ適正なものにすることができる。本研究では、臓器選択的ターゲッティング可能なハイスループットスクリーニングシステムの構築を目的とし、消化器固形癌において発現が上昇する organic anion transporting polypeptide(OATP)1B3 に着目し、演者らが開発した蛍光標識基質(J. Lipid Res., 47, 1196-1202, 2006)を用いる評価スクリーニングシステムの構築を試みた。

まず、OATP1B3 の安定発現細胞株を樹立し、7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazole(NBD)で標識した5種の胆汁酸の輸送活性を評価した。その結果、NBD標識ケノデオキシコール酸(CDCA-NBD)が最も効率よく輸送されることが明らかとなった。続いて、CDCA-NBDを蛍光プローブとして用い、薬物スクリーニングシステムを構築した。共焦点レーザー顕微鏡を用いる場合は、リアルタイムに多検体を解析することは困難となる。そこで今回、イメージングサイトメーターIN Cell Analyzer 1000を用い、蛍光イメージング技術を駆使したマススクリーニング法確立の可能性を検討した。96 well plateに細胞を播種後、70% 程度コンフルエントになったところで実験に供した。CDCA-NBDを0.1 µMに設定したとき、イメージングコントラストが最大(シグナル/バックグラウンド比が最高)となり、OATP1B3の典型的な輸送基質であるbromosulfophthaleinによる輸送阻害を明確に捉えることができた。

本法を用いて18種類の抗癌剤についてスクリーニングしたところ、OATP1B3の輸送基質として報告されている抗癌剤であるmethotrexateよりも強い阻害が認められた化合物は、docetaxel、actinomycin D、mitoxantrone、paclitaxel及びイリノテカンの活性代謝物であるSN-38の5種であった。これらについて、OATP1B3 による輸送の有無を検討したところ、OATP1B3 発現細胞においてSN-38が明確に輸送されることが明らかとなった。

以上の結果より、演者は蛍光プローブを用いた新規の薬物スクリーニングシステムを構築し、新たな輸送基質を発見した。本法は多くの化合物の中からハイスループットに基質化合物を抽出し、トランスポーターを機能性器材として活用する新規薬物療法の開発に有用となるものと期待される。

略歴

平成19年4月 東北大学・病院・助教
平成17年4月 東北大学・病院・助手
平成16年4月 オランダ癌研究所・分子生物学分野・ポストドクトラルフェロー
The Netherlands Cancer Institute, Division of Molecular Biology (Piet Borst 博士), Postdoctoral fellow
平成15年3月 京都大学大学院薬学研究科博士後期課程医療薬学専攻修了
 「キノロン系抗菌薬の吸収・分泌機構に関する研究」により学位取得(博士(薬学)
平成13年3月 京都大学大学院薬学研究科修士課程医療薬学専攻修了
平成11年3月 東北大学薬学部薬学科卒業

現在の研究テーマ

  • 蛍光標識化合物を用いた薬物輸送機構のバイオイメージング
  • トランスポーターを機能性器材として用いた薬物スクリーニングシステムの構築
  • 抗腫瘍薬の体内動態に関する研究
  • トランスポーターのプロテオーム解析

代表論文

  1. T. Hishinuma, K. Suzuki, M. Saito, H. Yamaguchi, N. Suzuki, Y. Tomioka, I. Kaneko, M. Ono, and J. Goto. 2007. Simultaneous quantification of seven prostanoids using liquid chromatography/tandem mass spectrometry: The effects of arachidonic acid on prostanoid production in mouse bone marrow-derived mast cells. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 76 (2007) 321-329
  2. C.J. de Wolf, H. Yamaguchi, I. van der Heijden, P.R. Wielinga, S.L. Hundscheid, N. Ono, G.L. Scheffer, M. de Haas, J.D. Schuetz, J. Wijnholds, P. Borst, cGMP transport by vesicles from human and mouse erythrocytes, Febs J 274 (2007) 439-450
  3. H. Yamaguchi, M. Okada, S. Akitaya, H. Ohara, T. Mikkaichi, H. Ishikawa, M. Sato, M. Matsuura, T. Saga, M. Unno, T. Abe, N. Mano, T. Hishinuma, J. Goto, Transport of fluorescent chenodeoxycholic acid via the human organic anion transporters OATP1B1 and OATP1B3, J Lipid Res 47 (2006) 1196-1202
  4. H. Yamaguchi, T. Hishinuma, N. Endo, H. Tsukamoto, Y. Kishikawa, M. Sato, Y. Murai, M. Hiratsuka, K. Ito, C. Okamura, N. Yaegashi, N. Suzuki, Y. Tomioka, J. Goto, Genetic variation in ABCB1 influences paclitaxel pharmacokinetics in Japanese patients with ovarian cancer, Int J Gynecol Cancer 16 (2006) 979-985
  5. K. Usui, T. Hishinuma, H. Yamaguchi, N. Tachiiri, J. Goto, Determination of chlorhexidine (CHD) and nonylphenolethoxylates (NPEOn) using LC-ESI-MS method and application to hemolyzed blood, J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 831 (2006) 105-109
  6. K. Usui, T. Hishinuma, H. Yamaguchi, T. Saga, T. Wagatsuma, K. Hoshi, N. Tachiiri, K. Miura, J. Goto, Simultaneous determination of pancuronium, vecuronium and their related compounds using LC-ESI-MS, Leg Med (Tokyo) 8 (2006) 166-171
  7. Y. Tomioka, S. Kisara, S. Yoshizawa, M. Ozawa, N. Suzuki, H. Yamaguchi, T. Hishinuma, M. Mizugaki, J. Goto, Preparation of neocarzinostatin apoprotein mutants and the randomized library on the chromophore-binding cavity, Biol Pharm Bull 29 (2006) 1010-1014
  8. N. Suzuki, T. Hishinuma, H. Yamaguchi, M. Sato, T. Kaneko, M. Matsuura, T. Kaminishi, H. Nakamura, M. Ozawa, Y. Tomioka, M. Wada, T. Ishii, Y. Hayashi, J. Goto, A simple and sensitive method for quantifying sirolimus in whole blood using liquid chromatography/electrospray ionization tandem mass spectrometry, Jpn J Pharm Health Care Sci 32 (2006) 289-294
  9. H. Yamaguchi, I. Yano, H. Saito, K. Inui, Effect of cisplatin-induced acute renal failure on bioavailability and intestinal secretion of quinolone antibacterial drugs in rats, Pharm Res 21 (2004) 330-338

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