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IN Cell User's Day 2009 講演要旨

心血管病における酸化LDL受容体LOX-1の役割

国立循環器病センター 沢村達也

「ヒトは血管とともに老いる」と言われる。では、その血管はどのように老いていくのであろうか。

血管を老化させる動脈硬化が、悪玉コレステロールといわれるLDLにより引き起こされるという事は、広く知られるようになった。そして、スタチンと呼ばれる血中コレステロール低下薬が臨床の場で広く使われ、コレステロールを低下させるだけでなく、虚血性心疾患の発症、死亡率の低下にたいへん寄与している。ところが、血液の基本的成分であるLDLよりも、それが酸化的な修飾を受けたものの方が動脈硬化様の変化を起こしやすいとの考えが1980年代に導入された。これが、「酸化LDL仮説」である。

酸化LDLは、マクロファージに取り込まれて動脈硬化巣で大きな体積を占めている泡沫細胞を誘導するが、そのような形態的に顕著な変化の起きる前に、血管の最内層を覆う一層の細胞、血管内皮細胞に作用し、血管の機能を病的に変化させる。これが「Response-to-injury仮説」である。この病的機能変化は、血管内皮由来NOの減少や、ケモカイン・白血球接着分子の発現に基づくが、これが血管のバランスを収縮性・炎症性に傾け、引き続くマクロファージの侵入などの形態的変化へとつながっていくと言われていた。

ところが、この血管内皮機能変化もまた酸化LDLにより引き起こされることが明らかとなり、内皮細胞上の酸化LDLの作用点、すなわち受容体が何であるかが焦点となった。運よく「LOX-1」と名付けたこの受容体を同定することができ、酸化LDL仮説、Response-to-injury仮説を検証していった。

in vivoでのLOX-1の役割を遺伝子改変マウスや、抗体を用いたLOX-1機能抑制により検証すると、血管内皮機能変化にとどまらず、炎症や、動脈硬化、心筋梗塞、血管再狭窄、血栓などにおいて、LOX-1の機能が病態促進に確かに重要であることが明らかになった。

仮説の証明のため、このような型どおりのアプローチをとりつつも、常に2つの方向の疑問が根底にあった(今もある)。すなわち、そもそも酸化LDL受容体とはどこから出てきたのか?本来どういうものなのか?という疑問と、本当に酸化LDLでよいのか?それだけで説明できるのか?では、病気の予防・治療に役立つのか?という疑問である。平たく言えば、「LOX-1はどこからきて、どこに行くのか?」ということである。

このような疑問を解いていくと、LOX-1が、ただ酸化LDLを結合するだけでなく、実は細胞接着因子として働く事、また、酸化LDL以外のリガンドが少なからずある事がわかってきた。そして、このような機能こそが、LOX-1本来の機能として、循環器系の機能調節にかかわっている可能性が見えてきた。その一方で、臨床的検討において、LOX-1が心血管病の発症・進展に確かにかかわっていそうだという証拠が得られつつある。実際に診断・治療に応用できるのではないかという希望が現在では持てるようになってきた。

酸化LDLという少々変わったものの受容体を研究対象としたため、1つの分子にもかかわらず、同時にいろいろな側面から考える必要があるが、それは意図して狙った事でもあった。まだまだ、全貌を明らかにしたというには程遠いが、広がりつつあるLOX-1の研究について紹介したい。


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